「浮気相手からお金を取ったら、主人に嫌われるでしょうか。」
「主人から『そこまでするのか。もうお前とはやっていけない』と言われたりしないでしょうか。」
「慰謝料請求しても、結局主人がお金を払うことになるだけではないのでしょうか。」
浮気の証拠が確認できたあと、このようなご相談をいただくことがあります。
浮気相手には、きちんと責任を取ってほしい。
慰謝料も請求したい。
でも、ご主人とは離婚したくない。
できることなら、もう一度夫婦としてやり直したい。
この二つの気持ちの間で悩む方はいらっしゃいます。
私は23年間、浮気や夫婦問題のご相談を受けてきましたが、慰謝料請求について、
「した方がいいですよ。」
とも、
「修復したいなら、しない方がいいですよ。」
とも、簡単にはお答えしていません。
なぜなら、慰謝料請求をした時のご主人の反応も、浮気相手との関係も、ご夫婦の状況も、それぞれ違うからです。
私はそんな時、
「慰謝料請求がその後の修復に影響するかどうかは、ご主人の性格や浮気相手との関係、ご夫婦の状況によって違います。一概にした方がいいとも、しない方がいいとも言えません。まず、お話を聞かせてくださいね。一緒に考えましょう。」
とお話ししています。
慰謝料を請求して、その後修復へ進んだご夫婦
40代の、子どものいないご夫婦でした。
ご主人が同級生の女性と不倫関係になり、奥様からご相談をいただきました。
調査をして、不貞の証拠も確認できました。
その後、奥様は浮気相手の女性に自分で手紙を書き、慰謝料を請求しました。
すると、相手の女性から返事が届きました。
そこには、謝罪と慰謝料請求に応じるという趣旨のことが書かれていました。

そして、ご主人からも奥様に話がありました。
「懐かしい気持ちで、最初は友達として会っているつもりだった。」
「申し訳なかった。」
「もう二度としない。」
そして、
「慰謝料を請求するという行動に出るところまで、君を追い込んでしまった。」
ご主人は、奥様が慰謝料請求をしたことを責めるのではなく、そこまで奥様を追い込んだ自分の行動を振り返りました。
その後、ご夫婦は修復へと進んでいきました。
もちろん、
慰謝料を請求したから修復できた
ということではありません。
ただ、このご夫婦にとっては、浮気相手が謝罪し、ご主人も自分のしたことと向き合った。
それが今回の浮気に一つの区切りをつけることにつながったのだと思います。
慰謝料請求が、ご夫婦にとっての**「けじめ」**になることもあるのです。
一方で、慰謝料請求をきっかけに関係が変わったご夫婦もいました
別のご夫婦では、奥様が弁護士を通じて浮気相手に慰謝料を請求しました。
すると浮気相手の女性は、ご主人に、
「どうしたらいい?」
と連絡しました。
その連絡を受けたご主人は、奥様に、
「彼女が悪いんじゃない。」
「悪いのは僕だ。」
「慰謝料は僕が払う。」
と伝えました。
後日、本当にご主人から慰謝料が振り込まれました。
そして、ご主人は家を出て行きました。
その後、浮気相手の女性とは別れたようでしたが、ご主人も自宅には戻らず、数か月にわたって別居が続きました。

ただ、このケースについて、
「慰謝料請求をしたから、夫婦関係が悪くなった。」
と単純に言うことはできません。
慰謝料請求をきっかけに、それまで見えていなかったご主人の考えや、浮気相手に対する気持ちが表に出てきたとも考えられるからです。
同じ「浮気相手への慰謝料請求」でも、その後はこれほど違います。
だから私は、
「慰謝料を請求しても修復できますか?」
という質問に、簡単に「できます」「できません」とは答えられないのです。
「修復したい」と「慰謝料を取りたい」は、どちらか一つではありません
「主人とは修復したい。」
「でも、浮気相手には責任を取ってもらいたい。」
その二つを望むことは、おかしなことではありません。
どちらか一つを選ばなければならないわけでもありません。
また、慰謝料だけではなく、**「浮気相手との関係をきちんと終わらせたい」**と考えている方もいらっしゃると思います。
浮気相手と別れさせたいと考えた時に大切なことについては、こちらのコラムでもお話ししています。
【内部リンク:第36回「浮気相手と別れさせたい」】
ただ、
「私は、何を一番大切にしたいのだろう。」
そこは、一度考えてみてほしいと思っています。
もし、
「何よりも夫婦を修復したい。」
という気持ちだけは譲れないのであれば、浮気が分かった直後の感情のまま、すぐ慰謝料請求に進まなくてもいい場合があると私は考えています。
まず、ご主人と向き合ってみる。
ご主人が今回の浮気をどう受け止めているのか。
浮気相手との関係を本当に終わらせるのか。
夫婦として、もう一度やっていこうという気持ちがあるのか。
修復を始めながら、ご主人の様子を見る時間があってもいいと思うのです。
修復を始めてから、慰謝料請求を考える方法もあります
少し時間が経ち、ご夫婦の関係が落ち着いてきた。
その時に、もう一度自分の気持ちを考えてみる。
それでも、
「やっぱり浮気相手には、きちんと責任を取ってもらいたい。」
「このまま何もなかったことにはできない。」
「慰謝料を請求することで、今回のことに夫婦としてけじめをつけたい。」
そう思うのであれば、その時に改めて慰謝料請求を考えるという方法もあります。
ただし、慰謝料請求には時効があります。
民法724条では、不法行為による損害賠償請求権について、原則として「損害及び加害者を知った時から3年間」、また「不法行為の時から20年間」と定められています。具体的な起算点などは個別事情によって異なる場合がありますので、実際に請求を検討する際には弁護士など法律の専門家に確認してください。
ですから、
「後からでも、いつでも請求できる。」
ということではありません。
でも、期限を確認したうえで、
「請求できるから、今すぐ請求する。」
ではなく、
「私は何のために請求するのか。そして今がそのタイミングなのか。」
を考える時間は持てると思います。
修復を一番に望んでいるのであれば、私はその時間も大切にしてほしいと思っています。
大切なのは「何のために慰謝料を請求するのか」
浮気が分かった直後は、当然、感情が大きく動きます。
「許せない。」
「浮気相手にも責任を取ってほしい。」
そう思うのは無理もありません。
でも、慰謝料請求という行動を起こす前に、一度だけ考えてみてください。
「私は、何のために慰謝料を請求したいのだろう。」
浮気相手に責任を取ってもらうためなのか。
自分の気持ちに区切りをつけるためなのか。
夫婦として今回のことにけじめをつけるためなのか。
ここが分からないまま感情だけで動いてしまうと、本当に自分が望んでいたことから離れてしまう場合があります。
私は調査を始める時にも、
「この調査で何を一番確認したいのか。」
そして調査が終わった後にも、
「確認した事実を、この先どう使いたいのか。」
ということを大切にしています。
慰謝料なのか。
修復なのか。
離婚なのか。
あるいは、今は結論を出さず現状を維持するのか。
目的が変わること自体は悪いことではありません。
ただ、自分が一番大切にしたいものを見失ったまま、感情だけで行動しないこと。
それは、とても大切だと思っています。
慰謝料請求は「お金を取ること」だけではありません
もちろん、慰謝料は法律上、損害に対する金銭的な賠償です。
ただ、相談者様の気持ちとしては、それだけではないことがあります。
「浮気相手にも、自分がしたことに責任を持ってほしい。」
「夫にも、今回のことを曖昧にしてほしくない。」
「ここできちんと区切りをつけて、夫婦として前を向きたい。」
そのための一つの方法として、慰謝料請求を考える方もいらっしゃいます。
それによって気持ちに区切りがつき、ご夫婦が良い方向へ進めるのであれば、それも一つの選択だと思います。
でも、その反対の結果になることもあります。
だからこそ、
「請求するか、しないか。」
だけではなく、
「いつ請求するのか。」
「何のために請求するのか。」
そこまで考えてほしいのです。
まとめ|修復を一番に望むなら、焦って決めなくてもいい
浮気相手に慰謝料を請求しても、夫婦を修復することはできますか。
私は、
実際に修復へ進んだご夫婦を見てきました。
でも、すべてのご夫婦が同じ結果になるわけではありません。
慰謝料請求をした時、ご主人がどう受け止めるのか。
浮気相手がどのような反応をするのか。
その時のご夫婦の関係がどうなっているのか。
それぞれ違います。
だから、
修復もしたい。慰謝料も取りたい。
そう思っているのであれば、どちらかをすぐに諦める必要はないと思います。
ただ、
「夫婦の修復だけは譲れない。」
のであれば、その目的を一番に置いてみてください。
まず修復に向けて進んでみる。
その中で少し冷静になってから、
「それでも私は、慰謝料を請求することで今回のことにけじめをつけたい。」
と思うのであれば、その時に改めて考える。
もちろん、慰謝料請求には時効がありますから、法律上の期限は確認しておく必要があります。
でも、
請求できるから、今すぐ請求しなければならないわけではありません。
大切なのは、
慰謝料を取ることだけを目的にするのではなく、その先に自分がどんな夫婦でいたいのかを考えること。
私はそう思っています。
今、慰謝料請求をした方がいいのか。
それとも、まず夫婦の修復を優先した方がいいのか。
迷っているのであれば、
自分が一番大切にしたいものは何なのか。
そこから考えてみてください。
よくあるご質問(Q&A)
Q. 浮気相手に慰謝料請求したら、夫婦修復は難しくなりますか?
一概には言えません。
実際に慰謝料請求をしたあと、夫婦として修復へ進んだケースもあります。
一方で、請求をきっかけに、ご主人の予想していなかった反応が出ることもあります。
ご主人の性格、浮気相手との関係、ご夫婦の状況などを考えたうえで判断することが大切です。
Q. 修復したいなら、浮気相手への慰謝料請求は諦めた方がいいですか?
必ずしもそうではないと思います。
「修復したい」と「浮気相手に責任を取ってほしい」
という二つの気持ちを持つことは、おかしなことではありません。
修復を一番に考えるのであれば、請求するかどうかだけではなく、いつ行動するのかも含めて考えてみてください。
Q. 夫婦関係が落ち着いてから慰謝料請求することもできますか?
慰謝料請求には時効があります。
その期間内で請求を検討することは可能ですが、いつから時効が進むのかなどは個別事情によって異なる場合があります。
時間を置くことを考えている場合には、先に弁護士など法律の専門家へ期限を確認しておくと安心です。
Q. 浮気相手への慰謝料を、夫が払うと言っています。どうしたらいいですか?
実際にそのようなケースはあります。
ただ、ご主人がどのような気持ちでそう言っているのかと、法律上の責任は分けて考える必要があります。
修復を望んでいるのであれば、まずご主人がなぜそう考えているのかを確認し、慰謝料請求そのものについては必要に応じて弁護士へ相談してください。


