「やり直しなんてできるんですか。」
「変わってしまった気持ちが、元に戻るんでしょうか?」
「『もうやっていけない』と言った主人の気持ちが、変わることなんてあるのでしょうか。」
「やり直したい気持ちはあるけれど、自信がありません。」
私は23年間、多くの浮気や夫婦問題のご相談をお受けしてきました。
浮気が分かったあと、
「夫婦関係は元に戻るのでしょうか。」
と聞かれることは、本当にたくさんあります。
私はそんな時、
「できるのかなぁって、不安ですよね。一緒に考えていきましょうね。」
とお伝えしています。
そして、
「今日まで辛かったですよね。今日からは一人ではないですからね。」
「頑張ってこられたんですね。まずはゆっくりお話を聞かせてくださいね。」
と。
浮気という出来事があった直後に、
「修復する。」
「離婚する。」
と、すぐに答えを出せる方ばかりではありません。
むしろ、
「やり直したい。」
でも、
「本当にやり直せるの?」
そんな二つの気持ちの間で揺れている方の方が多いように感じます。
だから私は、すぐに答えを出さなくてもいいと思っています。
「元に戻る」ことだけが、修復ではないと思っています
「夫婦関係を元に戻したい。」
そうおっしゃる方は多くいらっしゃいます。
でも私は、
昔とまったく同じ夫婦に戻ることだけが、修復ではない
と思っています。
夫婦は年月とともに変わります。
子どもが生まれる。
仕事が変わる。
親のことを考えるようになる。
子どもが成長し、夫婦二人で過ごす時間が増えていく。
結婚した頃と、10年後、20年後では、二人を取り巻く環境も変わっています。
ですから、浮気が起きる前の夫婦へそのまま戻ろうとするのではなく、
「今の二人で、もう一度夫婦をつくっていく。」
そんな考え方があってもいいのではないでしょうか。
実際に、そうやってもう一度夫婦の時間をつくり直したご夫婦がいらっしゃいました。
「これからは、お互い好きなことをしましょう」
40代のご夫婦でした。
大学生と高校3年生の息子さんがいらっしゃり、奥様はパートのお仕事をフルタイムでされていました。
ご主人は、全国の百貨店の催事場などで店舗を構える仕事をされていて、出張が非常に多い生活でした。
それでも、ご主人は、
「自分たちは仲の良い夫婦だし、仲の良い家族だ。」
と思っていたそうです。
ところがある日、奥様から突然、
「子どもも手が離れたから、これからはお互い好きなことをしましょう。」
「お互いに干渉しないようにしましょう。」
と言われました。
ご主人には、その言葉の意味がよく分からなかったそうです。
そして、それを境に奥様の生活が少しずつ変わっていきました。
ご主人が家にいる日でも、帰宅するのは深夜。
家族の夕食も、以前のように奥様が用意するのではなく、スーパーのお弁当という日が増えていきました。
そして、ご主人がもう一つ気になったのが、奥様の外見でした。
ご主人の言葉を借りれば、
「年齢なりの普通のおばさんだった。」
という奥様が、急におしゃれをするようになったそうです。
「まさか。」
そう思いながらも、違和感が消えない。
そして、ご主人は事実を確認したいとご相談に来られました。
調査の結果、奥様には別の男性がいることが分かりました。
浮気を知ったご主人が最初にしたこと
浮気が分かったあと、ご主人は相手の男性のところへ行き、奥様との関係を終わらせることを約束させたそうです。
そして奥様には、こんなことを話しました。
「出張が多くて、子どものことも家のことも任せっきりで申し訳なかった。」
「何ができるのか、今は分からない。」
「でも、もう一回いい夫婦になりたい。」
私は、この言葉がとても印象に残っています。
もちろん、奥様が浮気をしたことと、ご主人の出張が多かったことは別の問題です。
「夫が家にいなかったから妻が浮気をした。」
という単純な話ではありません。
それでもご主人は、
「誰が悪かったのか」だけで終わらせず、「これから二人でどうしたいのか」
を考えようとされました。
そこで私は、ご主人に、
「まずは二人の時間をつくってみませんか。」
とお話ししました。
お子さんたちはもう大きくなっています。
二人で映画を観に行く。
外で食事をする。
最初は、それくらいからでいい。
すると、ご主人から、
「二人になっても、何を話したらいいのか分からないんです。」
と言われました。
実は、この言葉はこのご主人だけではありません。
修復を望んでいるご夫婦から、とてもよく聞く言葉です。
特に、お子様が小さい頃は、夫婦の会話の中心にいつも子どもがいたというご夫婦。
「今日、学校でこんなことがあったよ。」
「明日は部活だから。」
「進路はどうする?」
子どものことなら、いくらでも話すことがあった。
ところが、子どもが成長して手が離れ、いざ夫婦二人になってみると、
「二人で何を話せばいいんだろう。」
となってしまう。
長年夫婦として一緒に暮らしてきたのに、二人だけになると何を話したらいいのか分からない。
そんなご夫婦は、決して珍しくありません。
だから私は、ご主人に、
「難しい話をしなくてもいいんですよ。」
「一緒に食事をしたら、『何が一番おいしかった?』でもいい。」
「『このグラスいいね』でもいいんです。」
「二人で感じたことを、まず口に出すところから始めてみてください。」
とお伝えしました。

「今度はここに行こうか」と奥様から言うようになりました
最初のうち、奥様は、
「今さら二人で出かけるなんて……。」
という感じだったそうです。
それでも、ご主人は二人の時間をつくることを続けました。
映画を観に行く。
二人で食事をする。
最初から夫婦のこれからについて話し合おうとするのではなく、
「この料理、おいしいね。」
「このお店、いいね。」
そんな何気ない会話をする。
それを重ねていくうちに、少しずつ奥様にも変化が出てきました。
ある時から、奥様の方から、
「今度はここに行こうか。」
と言うようになったそうです。
以前は、
「これからは、お互い好きなことをしましょう。」
と言っていた奥様です。
その奥様が、
「今度はここに行こうか。」
と言うようになった。
「私」と「あなた」ではなく、もう一度**「二人で」**という時間を考えるようになったのです。
息子さんたちからは、
「いい年して。」
などと言われているそうですが、ご家族全体にとても穏やかな空気が流れるようになったそうです。
私はこのご夫婦を見ていて、
夫婦関係を修復するというのは、昔とまったく同じ二人に戻ることではない
と、改めて感じました。
今の二人だからできること。
今の二人だから話せること。
それを一つずつ見つけながら、もう一度夫婦をつくっていく。
このご夫婦は、そんなふうに関係を築き直していったのだと思います。
では、どんな夫婦でも修復できるのでしょうか
ここまで読むと、
「二人で努力すれば、どんな夫婦でもやり直せるんですね。」
と思われるかもしれません。
でも、私はそうは思っていません。
23年間、さまざまなご夫婦のご相談をお受けしてきましたが、修復がとても難しいと感じるケースもあります。
たとえば、浮気以外にも夫婦の間に大きな問題がある場合。
長年感じていた違和感やすれ違いについて、話し合わないまま過ごしてきた場合。
そして、お互いへの関心が薄れ、会話をしようとすること自体を長い間やめてしまっている場合。
こうしたご夫婦の場合、浮気という一つの問題だけを解決すれば、元の関係に戻れるというものではありません。
反対に、修復していくご夫婦を見ていると、すれ違いがあったとしても、夫婦の関係をそのままにせず、何とかしようとしてきたご夫婦が多いように感じます。
「最近、会話が減ったね。」
「何か怒っているの?」
「たまには二人で出かけようか。」
うまくいかなかったとしても、どちらかが声をかけたり、相手の気持ちを聞こうとしたりしてきた。
夫婦として相手に関心を持ち続けていた。
そんなご夫婦は、浮気という大きな問題が起きたあとも、もう一度話をするところから始められることが多いように感じています。
また、夫婦二人だけではなく、家族全体に会話があるご家庭も、関係をつくり直していきやすいように感じています。
もちろん、これはすべてのご夫婦に当てはまるものではありません。
夫婦の数だけ、それまで歩いてきた時間があります。
だから、
「これをすれば必ず修復できます。」
とは、私は言えません。
「修復できるか」を今すぐ決めなくてもいい
「やり直したい気持ちはあります。」
「でも、自信がありません。」
そんなふうにおっしゃる方もいます。
当然だと思います。
昨日まで信じていた人に裏切られた。
その直後に、
「これからも夫婦としてやっていきますか?」
と聞かれても、簡単に答えを出せるものではありません。
実際、夫婦が修復を試みた末に、
「やはり一緒に生きていくことは難しい。」
という結論に至るまで、1年、2年という時間がかかることもあります。
そして、離婚すると決めたからといって、すぐに離婚できるとは限りません。
お子様のこと。
住まいのこと。
仕事のこと。
これからの生活のこと。
経済的に自立するための準備が必要な方もいらっしゃいます。
一つずつ考えていけば、実際に別々の道を歩き始めるまでには、さらに時間が必要になることもあります。
だから私は、
今日、答えを出さなくてもいい
と思っています。
「やり直せるか分からない。」
それでもいい。
「離婚した方がいいのか分からない。」
それでもいい。
まずは、ご自身が今どう感じているのか。
そして、これからどう生きていきたいのか。
すぐに答えが出ないのであれば、答えが出るまで現状を維持するという選択もあります。
また、
「離婚した方がいいのかもしれない。」
「でも、本当にこれで終わりにしていいのか分からない。」
と迷っているのであれば、一度、夫婦関係の修復をしてみるという選択もあると思います。
やってみたからこそ、
「やっぱりこの人とやっていきたい。」
と思えるかもしれません。
反対に、
「ここまでやってみたけれど、やっぱり一緒に生きていくのは難しい。」
という答えが出ることもあるでしょう。
どちらの答えになるかは、やってみなければ分からないこともあります。
迷っている時に、無理に人生の結論を出さなくてもいい。
時間をかけながら、ご自身の答えを見つけていけばいいのではないでしょうか。

夫婦だから「言わなくても分かる」のでしょうか
長く一緒に暮らしていると、
「これくらい言わなくても分かるでしょう。」
と思ってしまうことがあります。
でも、夫婦はもともと、まったく違う環境で生きてきた二人です。
育った家庭も違う。
考え方も違う。
当たり前だと思っていることだって違います。
そんな二人が、一つの家庭をつくり、一緒に生活していくのが夫婦です。
だからこそ、
「言わなくても分かってほしい。」
だけでは、伝わらないこともあります。
今回ご紹介したご主人も、
「何を話したらいいか分からない。」
というところから始まりました。
でも、
「何が一番おいしかった?」
「このグラスいいね。」
そんな小さな言葉を口にするところから、二人の会話が少しずつ始まっていきました。
夫婦の修復というと、
「浮気についてきちんと話し合わなければ。」
「これからの夫婦について話さなければ。」
と、大きな話をしなければならないように思うかもしれません。
もちろん、それが必要な時もあります。
でも、その前に、
今日あったことを話す。
相手の話を聞く。
一緒に見たものについて、感じたことを言葉にする。
そんな日常の小さな会話も、とても大切なのではないでしょうか。
相手の立場になって考えてみる
そして、もう一つ大切だと感じていることがあります。
相手の立場になって考えてみることです。
「私はこんなに辛い。」
「私はこんなに頑張っている。」
そう思うことはあります。
でも相手にも、相手から見えている景色があります。
これは、浮気をされた側だけに求めていることではありません。
浮気をした側にも、
自分の行動によって相手がどれほど傷ついたのか。
その立場になって考えてほしいと思います。
お互いが、
「自分はこう思っている。」
だけではなく、
「相手はどう感じているんだろう。」
と考える。
夫婦としてもう一度歩いていくのであれば、そうした思いやりを持ち続けることが、とても大切なのだと思います。
まとめ|「元に戻る」ではなく、もう一度夫婦をつくっていく
「浮気をされたあと、夫婦関係は元に戻りますか?」
この質問に、
「必ず戻ります。」
とは言えません。
修復できるご夫婦もいます。
長い時間をかけた末に、別々の道を選ぶご夫婦もいます。
でも私は、修復を考える時に、
「昔と同じ夫婦に戻らなければ。」
と思わなくてもいいと思っています。
二人とも、あの頃とは違います。
年齢も重ねました。
生活も変わりました。
経験したことも増えました。
だから、昔に戻るのではなく、
今の二人で、もう一度夫婦をつくっていく。
そんな修復があってもいいのではないでしょうか。
好きになって、
「一生、この人と。」
と思って結婚した相手です。
もちろん、だから何があっても離婚してはいけない、という意味ではありません。
でも、そのご縁を終わらせる前に、
「本当にこれでいいのかな。」
と一度考えてみてもいいのではないでしょうか。
失って初めて、その大切さに気づくものもあります。
夫婦だから分かってくれる。
夫婦だから言わなくても伝わる。
ではなく、
言葉にすること。
相手の話を聞くこと。
相手の立場になって考えること。
そんな小さなことを、もう一度二人で始めてみる。
「やり直せるかどうか、まだ分からない。」
今は、それでもいいと思います。
できるのかなぁって、不安ですよね。
一人で答えを出そうとせず、まずはゆっくり考えていけばいいのではないでしょうか。
よくあるご質問(Q&A)
Q. 浮気をされたあとでも、夫婦関係は修復できますか?
修復して、もう一度夫婦として歩いていくご夫婦はいらっしゃいます。
ただ、すべてのご夫婦が修復できるとは言えません。
23年間ご相談をお受けしてきた中では、浮気以外にも夫婦間に大きな問題があったり、長い間すれ違いを放置していたりする場合には、修復が難しいと感じることもありました。
大切なのは、「昔とまったく同じ夫婦に戻る」ことだけを目指すのではなく、今の二人でどんな夫婦になっていきたいのかを考えることだと思います。
Q. 修復するか離婚するか、すぐに決めた方がいいですか?
私は、迷っているのであれば、無理に今すぐ答えを出さなくてもいいと思っています。
答えが出るまで現状を維持するという選択もあります。
また、一度修復に向けて二人でやってみて、
「やっぱり一緒にやっていきたい。」
と思うこともあれば、
「ここまでやったけれど難しい。」
という答えが出ることもあります。
ご自身の人生に関わる大切なことですから、時間をかけて考えてもいいのではないでしょうか。
Q. 夫婦関係を修復したいのですが、何から始めればいいですか?
「夫婦についてきちんと話し合わなければ」と考えると、何を話せばいいのか分からなくなってしまうことがあります。
今回ご紹介したご夫婦のように、
「これ、おいしいね。」
「今度ここに行ってみようか。」
そんな何気ない会話から始めてもいいと思います。
大切なのは、相手に関心を持ち、感じたことを言葉にしてみること。


